腕時計
腕時計を買った。
もう何年もずっと、スマホで時刻を確認していたけれど、それをやめたかった。
スマホを開くと、急がなくてもいい通知が目に留まる。気づいたら、SNSを見たり、目的ではないことを始めている。数十分なんて、削り取られたように経過する。
誘惑、というか、もはや無意識の画面に吸い込まれるような動作を避けたいが為に、スマホから距離を取りたかった。そして、おっちょこちょいにスマホを置いたまま出かけてしまった時、すこぶる不便だった。
ようやく出会った腕時計は、おもちゃみたいな質感とカラーリングで、時計が目に入るたびにテンションが上がる。生活防水だからって、顔を洗うときや食器を洗う時も身につけている。気に入ったものを肌身離さないなんて、なんだか子どもみたい。
好きなものがそばにあるって、たのしい。
スマホは便利だけれど、電話、時計、アラーム、カメラ、情報収集、買い物、動画視聴と、豊富な機能ゆえに、依存度が高くなる。誰よりも、私のことを知られているような気がするのも、なんだか末恐ろしい。
一方、腕時計のひとつの物体に対して、時刻を表示する、というたったひとつの機能、というのも、シンプルで気持ちがいい。潔い。それを不便ととることも、もちろんできるのだけれど、今の私は、その心地良さに惹かれている。
自分にとって、心が穏やかでいられるようなバランスを探して、ほどよく、道具にお世話になりたい。
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